田部井 義人
1980年生まれ、群馬県前橋市出身
県立前橋高校卒業後、青山学院文学部英文学科卒業。
自身がLGBTであることと向き合いながら、東京の出版社でライターとして活躍するが、あるきっかけを機にフリーライターとして活動。
順風満帆に社会生活を送るはずだったが、忍び寄る病に気づかずうつ病を発症し、故郷でひきこもりとなる。廃人とも言える暮らしを送る中で見えた小さな光を手に再び上京し、そこで彼を大きく成長させる人物に出会うことになる。闘病生活を続ける中で彼が見た景色、病を経験したからこそ得たもの、そこで出会えた夢や希望を包み隠さず語る。
前回に引き続き、気になることを根掘り葉掘り聞いております!
前回のインタビューはこちらよりどうぞ
インタビュアー:にじ練馬スタッフ 明田
それでは宜しくお願いいたします。前回は田部井さんの半生や過去への想い等を伺いましたが、今回は障がいを抱える当事者自身が身を守る方法や今後の展開について伺っていきたいと思います。
まず始めに、LGBTQや精神疾患を抱える人との社会とのギャップはどんなことだと思いますか?
社会の偏見や差別はしばらくなくならないと思います。行政が頑張ってくれたところで、末端は受けいれてくれません。親戚には公言していないし、言う必要がない人にはわざわざ話しません。
親が可哀想だと思ってしまうからです。親の育て方が悪いと言われたりするが、先天性の要因なのに、親のために親戚には公言していません。親にもルームシェアをしていると言ってごまかしている人も多いです
私自身も出版社にいたときは遠距離の彼女がいると隠していました。フリーライターになった27,8歳くらいにやっと親にもカミングアウトすることが出来ました。何の抵抗もなく他者に言えるようになったのは最近です。
特にゲイバーをしているときは何の抵抗もなく公言出来るようになりました。それからみるみる体調がよくなりました。これからは公言していこうと思っています。
今はセクシャルマイノリティを受け入れている会社もありますし、隠していて合コンにいこうと言われるのも嫌です。隠して生きるのはもう嫌です。私は最近ではそう思えるようになりましたが、私のゲイの友達の中で社会的に公言しているのはごく一部です。
結婚しないと出世しないと言われたり、隠すことは負の連鎖となります。
LGBTの人が社会で生きていく上でこういうことは理解しておいた方がいいことはありますか?
過度な期待はしない方が良いと思います。差別はなくなってないですからね。それってどのマイノリティにも言えることで、「差別」ってする人はしますからね。ゲイバーで働いているときも、それに対する差別的な発言をする人もいますが、慣れておくことも必要なのかなと思います。うつのときも、うつって甘えでしょ?という風潮もあるので、「うん、甘えかもね」とか言って流します。
差別する人って自分が差別しているということに気づいてない人も多いです。僕もきっと何かしらしているし、差別をしている側に悪意があるとも限らないし、悪意がないのであればとがめません。いちいち腹を立てていたら、きっと精神的に持ちません。そりゃイラっとすることもあるけれど、それって自分に対してもっと自分をオープンにしていけば、わかってくれる人も多いはずです。半々の意識でいいのではないかと思います。差別されるのが当たり前なのだから、半分理解してくれる人がいれば十分なんじゃないかという感じで。
社会に出ていかないとやっぱそういうことは言われません。「そんな寝てばかりいて」とか、「あんたの病気なんてただの甘えだから」とか、そんなことを言う人ばかりだったらそんな場所にはいない方がいいと思いますが。私が障害者雇用を目指すのであれば、周りに理解してもらえるように自分で務めます。差別がある人とはなるべく関わらないとか、蘇生術を身に着けていくとか、差別とかがある人に対する免疫をつけていかないといけないかもしれないですね。明らかな嫌がらせをされるのであればまた別ですが、流す努力をするくらいがちょうどいいのではないかと思います。言うことによって辛いこともあると思います。しかし、他に出て行って良くなっていきます。好転していっています。わたしの場合はですけどね。
社会に対して、これは理解してほしいということはありますか?
特にいることによって害悪はあたえないよ、ということです。僕がゲイなので、襲わないでくださいって言われることがあるんですけど、襲わないですから。LGBTQだから襲うってことはないし、LGBTQだから怖いとかいう偏見はやめてほしい。LGBTQはどこの社会にも存在する、ということをわかってほしいです。
親に特に言いたいことは、自分の子供がLGBTQであるという可能性を否定しないでほしいです。うちの子に限ってLGBTQではないっていうことはないので。僕の両親が特殊だから僕が生まれてきたわけじゃないですし。遺伝子の問題なので、そんなに細かくLGBTQについて勉強してくださいとか、理解をしてほしいとは思わないですが、LGBTQの人は身近に存在するということは理解してほしい。左利きの人と同じくらいの確立でいるって言われているので。目に見えづらいからわかりにくいだけで、実際にいるものですからね。
今後の進路を教育に絞った理由は何ですか?
僕が精神的に不安定でフリーライターをしているとき、ある不登校の中学1年生の家庭教師をすることになり、僕を雇った理由が、県立前橋高校に入学させたいということで選ばれたようなのですが、僕自身が障がいの話をしたら心を開いてくれて、実は学校の先生のことが好きだと打ち明けてくれたことがありました。僕もゲイだしそういう感情は持っていてもいいのではないかという話をしました。そののち、女の子になりたいという願望を打ち明けてくれました。ですが、親が同性愛者の僕のプロフィールを見て、うちの子を狙っているのではないかと言われて、もう家庭教師も辞めるしもう会うなと言われました。そのことが恥ずかしいと思った親はその子を、群馬の山の方の全寮制の学校に入れて、もう連絡がとれなくなってしまいました。
そのあと、女性の名前で学校に通っていることを知りました。そこまでしないとだめなんだと感じました。そのあと大学に行ったとかいう話も聞いていないし全然心のケアがされていないのかと、とても気がかりです。
今はバックアップする団体も増えているが、今8%くらいのセクシャルマイノリティがいるって言われていますが子供は守られていない。教育現場も変えようと言っているが、実際に変わっていません。
ある調査で、LGBTQの3割の子が不登校になっており、そののち5%の人が住む家を失っています。それはなぜかというと、学歴がないからだと思います。
職歴もない学歴もない状態だと、なかなか就職も出来ません。
LGBTQで悩んでいるときに、近くに相談出来る人もあまりいません。
相談出来る環境に行ける子は割と明るい子で、そこに行けない子がたくさんいます。
いじめられている子もいれば不登校の子も多いですが、大学を出ている人もいます。
そこで必要なのは不登校の児童やひきこもりの支援だと感じました。
LGBTQが原因で不登校やひきこもりになって、30歳とかになって社会に出ようと思っても取り戻すのにだいぶ時間がかかってしまうと思うので、10代20代でもう一回社会に戻せる支援が出来ないかと思って、学び舎MXMを開校しようと思いました。そういう人達を支援したいと思ったのが企業理念です。東京に一件あれば間に合うってものではないので、LGBTQの教育者も育てていければいいなと思っています。
現在の立ち位置としては、「経営者でフリースクールの代表」ですが、教育評論として企業も含めて、LGBTQってこういう人間だということを発信していきたいと思っています。
意外と学校の先生も自分のクラスにLGBTQの人がいないと思っていますが、今は20人に一人はLGBTQの人がいると言われています。教師の意識改革もやっていかないといけません。
学校環境を作っているのは教師なので、教師の考え方を変えることで、悩んでいる人が通いやすい環境を作ることが出来るので、そういう発信もしていきたいです。
学校が変わらないと先生も変わらない、先生が変わらないと生徒も変わりません。
今後認知していくことが出来たらやりたいことはありますか?
やっぱり恋愛をしたいと思います。家庭を築きたいです。子供をほしいとは思いませんが。昔は子供を作るために女性と結婚しようと思ったこともありますが、今は考えが変わって、子供を産めないから何かを残したいと考えるようになりました。
今直近で学びたいことは何ですか?
学び舎MXMで不登校の生徒と関わっていき、子供たちと一緒に成長していきたいと思っています。本で学べることもありますが、直接話を聞いていきたいです。
今雇われではなく使命を感じてやっているので、賛同してくれている人に対して精一杯やらないといけないです。
フリースクールで一緒に学ぶっていう意識が素敵ですね。
そういうことを通して自分の意見があっているとは限らないので、色んな人を見てはっとさせられることもあると思いますし、一緒に学んでいきたいと思っています。
LGBTQの教育に関することだったら、田部井さんだよね、と言われる人間になりたい。
今のLGBTQについて研究している人もいるが、自分の本を読んで置けば、だいぶ理解できるよって言われるような人間になりたいですね。
今生き甲斐を感じるときはどんな時ですか?
今から頑張っていこうと思っているときに、応援してくれる人がいるっていうことに生き甲斐を感じますね。
今本当に小さいことで言うと、LGBTQの人用のHPでブログを書いているのですが、閲覧が増えていることを考えると、やっぱり悩んでいる人がたくさんいるのだと思います。
10年後はどんな自分になりたいですか?
講演活動もたくさんしたいです。今のフリースクールで生徒たちとたくさん学んで、ある程度築き上げたら、講演をしていきたいですね。
その学校で、不登校になる人が少なくなればいいなと思いますね。
そういうことが出来る人も育てていきたいです。自分ひとりだと限りがあるので、そういう団体も作ることが出来ればいいなと思います。
中学生の子とかが田部井さんの本を読んで勇気づけられる人がいるかもしれないですね。
今普通に借りることが出来ないと思うんですよ。でも、自分の友達がLGBTQだから私勉強してみようって思える社会にしたいですね。
変わるのは時間がかかることだとは思いますが、少しずつでも変わってきてはいるので。
同じように悩んでいる方にメッセージはありますか?
病気の方だったら、なるべく社会に積極的にでる努力をした方がいいということです。僕も一回社会性を失ったときもありますが、社会性を取り戻すってとても大変なことですからね。にじさんみたいな就労移行に行って就職するのが良いと思うし、僕みたいにカミングアウト出来る人もいますが、そういう人ばかりではないこともわかっているので、同じ悩みを持っている人と共有していった方が、少し楽になるのでは。実際そんな簡単にはいかないと思いますが悩みを2人で抱えれば半分になるとも言いますし、それはちょっとあると思うんですよね。
結構こういう話をすると、理解してくれる人も多いし、賛同してくれる人も意外と多いです。
賛同してくれて支えてもらっている分、裏切らないと決めています。一時期病気になってしゃべれないときもありましたが、やっぱり人と話すことによって自分を表現できたことで、自分の中での病気が良くなっていったということもあります。それが今の自分につながっています。
では最後に、田部井さんにとって人生とは何ですか?
人生とは「一生勉強」です。どの場、どの状況にいても勉強です。失敗したり間違えることもありますが、そのことによって得られるものもある。それをどうやって活かすかは自分次第です。死ぬまでの人生が一生勉強だと思えば、少し気が楽になりませんか?間違えてもいいのです。そこから得られる何かを発見していくことが人生だと思います。
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